【こんな症例も治りますシリーズ 502】『 犬の斜頸・眼振 』も 適切な診断と治療で治します

■ 犬の平衡感覚は、上のイラストの「カタツムリ」の様な骨の部分が重要です。
■ この部分や、その周辺が傷んでしまうと、『前庭疾患』という症状が出ます。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3NG9FYG

 

犬 11歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 目が揺れていて頭が傾き、真っすぐ歩けない 】とのことで来院されました。

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 昨日の夜までは普段通りだったのですが、今朝、起きてみると、いつもならケージから元気よく飛び出してくるのですが、中でうずくまったままでした。中から出してみると頭が傾いていて、両目眼が揺れ、真っすぐ歩けない、食欲もない、吐いている 』とのことから当院に来院されました。

 

 

 

■ 動物さんの頭(ヒトも含め)は、首の上にいつもバランスよく保たれています。 これは、主に前庭系と呼ばれる受容器で頭部の動きや位置を正しく認識し、脳などへ情報を伝えているからです。

 

 

■ 前庭系は、①末梢前庭:半規管、耳石器、前庭神経、 ②中枢前庭:小脳や脳幹に分けられます。

 

 

■■ このバランスを司る前庭系に異常がおこると(前庭疾患)、さっきまでは何とも無かったのに、急に眼が小刻みに揺れ始めて(眼振)、首を傾げるような姿勢(捻転斜頸)になり、ふらつく、すぐに倒れる、その場でグルグル回るなど歩き方にも異常が出ます。

 

■ その他、食欲不振、よだれを大量に垂らす、嘔吐、元気消失などもみられます。

 

 

 

■■ 前庭疾患の原因はそれぞれ末梢と中枢で分けられ、末梢性は中耳炎、内耳炎、老犬での特発性前庭疾患です。

 

 

■ 一方、中枢性としては、外傷や出血、髄膜脳炎、腫瘍(しゅよう)、脳梗塞(のうこうそく)などが挙げられます。

 

 

■ また、その他に、甲状腺機能低下症やてんかん発作に進行する前駆症状として、同じ様な症状が出る場合もあります。

 

 

■ 検査方法としては、耳鏡検査、神経学的検査、血液検査、CT検査、MRI検査等があります。

 

 

 

■■ さて、このワンちゃんは、当院でも、神経学的検査、耳の検査、血液検査をおこなったところ、捻転斜頸は、左側を下にしていて、眼振は水平に、かつ右側に急速に動いていたことから、患部は左側と診断しました。

 

 

■ 血液検査では特に異常は見られず、甲状腺ホルモン濃度(T4)も正常値の範囲内でした。

 

 

■ また、外耳にも異常は見られず、また、このワンちゃん、普段からてんかん薬を飲んでいたことから、薬物濃度を測定したところ有効濃度範囲内でした。

 

 

■■ 以上のことから、CT検査、MRI検査を実施していないため中枢性疾患の疑いは完全には除外できませんが、年齢等も鑑み、総合的に判断して、『 特発性末梢性前庭疾患 』と仮診断して治療をすすめることにしました。

 

 

 

 

◆◆ 『 特発性 』とは、原因が何か特定できないものを言い、中には特に何をしなくても改善することもあります。

 

 

■ ただ、老齢犬では体力が低下している場合が多く、前庭障害の気持ち悪さで嘔吐や食欲不振が見られるため、補液による水分や栄養補給、整腸薬、酔い止めの薬の投与など、犬の状態によっては対症療法を行います。

 

 

■■ このワンちゃんも、嘔吐、食欲不振があることから、通院で治療することにしました。

 

 

 

■ さて、通院2日目には、眼振はなくなり、頭の傾きも少しもとに戻ってふらつきも少なく飼い主様も「だいぶ元気になった」と喜んでおられました。 ただ、食欲がまだ完全には戻っていないことから、しばらく通院は続きそうです。

 

 

■ これからも飼い主様と一緒にワンちゃんを見守っていけたらと思います。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

 

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